2021.04.30 Category:kuriya手帖
5月のテーマは【気軽にはじめる保存食】→関連記事★
kuriyaでは食材販売などでおなじみの「麹屋 kinomama」、「麹香」、「田中山自然農園」、「鈴木ファーム」のみなさまに保存食作りの方法や素材、調味料、あると便利な道具についてお聞きしました。
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麹屋 kinomama/田口 千穂里さん
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kuriyaでの取り扱い商品のなかでも、リピート率の高い食品のひとつが季節の果物を味わえる「酵素シロップ」。kuriyaスタッフも入荷のたびに、今回はどんな組み合わせかな?とわくわくしています。
そんなkinomama・田口さんのお宅を尋ねてみました。
もともと、心と体のこと全般に興味があったという田口さん。これだ!と思い、上級麹士の資格を取得。加熱処理していない本物の甘酒を作ってみたい、という気持ちから麹作りから始めたそう。現在、加熱処理なしの、生き生きとした酵素を使った黒麹甘酒、塩麹、フルーツ酵素シロップなどを販売されています。
生麹を入れた「酵素シロップ」作りに何度挑戦しても、えぐみが出てしまうのが悩みのkuriyaスタッフ。ずばり美味しく作るポイントを聞いてみました。
「お客さまにも聞かれるんです。『真似して作るけど全然美味しくならない!』と。その点は自分でもよくわからないのですが…私は自分が持つ常在菌とか、発酵させる家の雰囲気をすごく大事にしています」
確かに、こちらの家の中には、なんともいえない気持ちがいい空気が流れています。温度管理なども特にされていないそうで、
「酵素シロップは組み合わせが無限大、気軽に取り入れるができるのが魅力です。作り手で味が変わるのが楽しいんです」
とはいえ組み合わせで失敗もあるそうで「そこが楽しいところ」とも。ご自身が楽しまれて作られているが伝わります。ちなみに道具にこだわりはありますか?
「ガラス製の4Lの瓶を使っています。消毒にはパストリーゼを使用。金属製の道具はイオンが反応してしまうので、木べらで混ぜます。発酵の見極めは、麹・液体・果物の三層になり混ぜたときに泡がぷくぷくとなったらオッケーです。あとはふきんで濾しています」
常在菌を大切にされているので、ご自身の手にはアルコール消毒は使わないそうです。
これからの季節、酵素シロップにおすすめの果物はありますか?
「桃ですね。初心者の場合はプラムを組み合わせて使うといいですね。あとは沖縄パイン。パインは作りやすい食材のひとつです」
終始、やわらかな雰囲気と素敵な笑顔が印象的。発酵には環境が大切と言われているので、家の雰囲気や自分自身の心の安定を心掛けているそうで、それを実践されているのだなあと感じました。
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麹香(きくこう)/樋口あやさん
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ひと手間ひと手間を大切に麹と向きあう日々。そんな作り手・樋口さんの思いが伝わるような麹や甘酒からは、しっかりと芯のあるちからを感じていただけるはず。
そんな、麹香(きくこう)/樋口さんがいちばん大切にしていることは何かと聞いてみたころ—-
「心と体を整える」
樋口さんが1番大切にしていること、だそうです。
熱っぽかったり、心がざわざわしていたり…とそんな時に作ると、麹や甘酒にその状態が伝わって上手くいかないそう。だから、きちんと整える。
では、どんなことに気を付けて作られていますか?と尋ねると
「心と体が整っている時に作る」
シンプルで迷いがない答えです。
どうしたら上手くいく?失敗しない作り方は?その問いかけには、
「失敗を恐れずに。むしろどんどん失敗して欲しい」とのこと。
なぜなら、失敗した時こそ振り返るきっかけになって、そこに学びがあるから。
—作った時の自分の状態はどうだった?
—麹の状態(季節は?温度は?)はどうだった?…など
「失敗して、振り返って…試行錯誤する時間も味わって。そんな経験を重ねて作って欲しい」
確かに今の時代、簡単に答えが手に入ると思いがちですが、自分の経験や知識を大切にしたいものです。
「分からないなりに、自分なりに、麹の状態を見て、香りをかぎ、音を聞いて…五感を大切に、自分の手で触れて作ってほしい」
ちなみにおすすめの食材は?
「その食材がもつ生命力を感じられる、時季のもの。この時期は、手に入ればネロリがおすすめ。+柑橘系の果物。平戸のなつかや、レモンなど。地元の食材を使うといいですね」
自分の手で混ぜ合わせて、発酵させる。どこにもない自分や家族の方に合ったものができる喜び。日々の暮らしの中で、楽しみながら発酵食品を取り入れたいですね。
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田中山自然農園/本田弘子さん、鈴木ファーム/鈴木恵美さん
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野菜生産者の方はどんな保存食作りをされているの?南島原市の地で有機農法をされている本田さんと鈴木さんにお話をお伺いしました。
お二人は草虫菜広セさんとともに「天と地の恵み」のチーム名で kuriya本店で野菜販売をされています。
「5月は新芽の時期。野草は身近なものだし、酵素も含まれています。
おかわかめ、セロリ、パセリに山椒、しろおおざ(シロザ)やカキドオシ…などを保存食にしています(本田さん)」
むむ、中には耳慣れない名前もあります。どのように摂り入れてますか?
「若い新芽にはエネルギーがたくさん含まれているので、酵素ジュースやハーブティーなどで気軽にいただきます。生のままでも、干して入れてもいいですね。保存食は手の込んだものという印象ですが、〈干す〉だけでも保存食といえます。(本田さん)」
それなら身近な野菜を干すことから始められそうです!
「とう立ちをすることは避けられないので、例えば、人参がたくさん採れたときには早めに干します。年中食べられるように濃いめに煮詰めて佃煮にしたり、ドレッシングにしたり、お味噌に漬け込んだりと様々な方法で保存食を作っています(本田さん)」
旬の時期に美味しさをぎゅっと閉じ込めているから、保存食は年中美味しく食べられるんですね。
田中山自然農園/本田さん
鈴木ファーム/鈴木さん
そして鈴木さんは、熟成時間が大事とおっしゃいます。
「梅も味噌も醬油も、年数がたつごとに塩がまろやかになる。変化の過程が一定ではないのが、また、楽しみなんです(鈴木さん)」
思うようにならないからこそ、奥深いのかもしれませんね。ところで、特にこだわっていることはありますか?
「やっぱり手を使うということです。消毒をせず、手袋をしない素手。自分の持っている常在菌、自分の持っているDNA…というのかは分からないけれど「手は宝」。それを生かさないのはもったいないと思っています(本田さん)」
手しごとのものって、確かに一人一人出来上がりが違いますものね。同じレシピでぬか床を作っても、あの人のは甘いけれど、私のは酸っぱいとか。プラス心の持ちようも関係あると、おっしゃる方もいらっしゃいます。
「もうそれは確実に! しっかり味に反映されていると思います。だから日々自分の心の調整をするのも、保存食を扱う上では大切なことだなあ、と思います。菌も人間も生きてるもの同士だから反応しているんですよ(本田さん)」
鈴木さんのこだわりは、自分で作った野菜を基本に、それに生産者として想いのある方の調味料を使っているそう。
「私は麹を入れるなどの、発酵系の保存食が好きです。熟成すれば、腐らないで発酵していく。ちゃんと向き合えば、ちゃんとおいしく食べられるものが出来上がるんです(鈴木さん)」
かつて発酵がうまくいかなかったとき、信頼できる材料だったか、自分の心持ちはどうだったかを考えると……はい、納得です。
そして、おっしゃるのは、何よりも経験すること。失敗してもいいので、自分で感覚を掴みとること。そして場所や環境を整えることも大事とおっしゃいます。
「保存食(の微生物・菌)は、人が気持ちがいいところが好き。暗いところが好きだったら、暗くしてあげるなど気にしてあげる。育てる感覚を持つことです。そうやって愛情を感じとって、旨味を出してくれるんだったら最高ですね(本多さん)」
手は宝。ちゃんと向き合って、気にしてあげて、育てる感覚を持つ。
生産者の方の言葉には、食べ物の最初から最後まで、きちんと見届けるまなざしが感じられました。
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お話を伺ったみなさまに共通しているのが、
心を整え、手で育て、成長に目を配る。
そうすれば保存食(の微生物・菌)は、食べ物を長く保存し、栄養分や旨味を増して返してくれる、ということ。
分量や手順などのテクニック的なことではなく、作り手の心や環境が仕上がりに影響があるとのお話は、食そのものに真摯に向き合っているからこその言葉なのだなあと感じました。
失敗を恐れず、いろいろと挑戦して楽しむこと。
ーーこれから始める保存食作りのヒントとなりそうです。
★保存食作りの関連商品や愛用の道具、作り方などは店頭でご紹介しています!
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■プロフィール
麹屋 kinomama/田口 千穂里さん
長与町で有機栽培のお米・天日塩・てんさい糖など材料にこだわって、黒麹甘酒、塩麹、酵素シロップなどを作っています。
麹香(きくこう)/樋口あやさん
海と山に囲まれた港町・佐世保暮らし。甘酒の販売と麹などの発酵教室を開催されています。
田中山自然農園/本田弘子さん、鈴木ファーム/鈴木恵美さん
南島原市で、農薬・化学肥料・除草剤・動物性堆肥を一切使用しない有機農法に取り組まれています。
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